暴力的正義の怖さ
一学期が終わり、終業式で通知表を渡した。
その日の夜、学校に来た保護者がいた。
「うちの子が3なわけないです!」
評価の観点が変わったこととか、私が悩んで悩んで慎重に公平に評価をしたこととか、保護者にとってそんなことは関係ないのだ。『うちの子に3をつけた美術教師』がただただ気に入らないだけ。
保護者と私が話す前から、外に声が漏れていた。
「そもそも、大学卒業したばかりのなんにも知らないような人に成績をつけさせるのはどうなんですか?」と。
私は初めての保護者対応ということもあり、ただただ緊張していた。冷静に…落ち着いて…と自分に言い聞かせ、聞かれたことに正直に答えるようにした。
成績のつけ方の説明をしたら、「そしたらあなたの指導方法がおかしいんですね?」と言われた。「どういう指導をしているのか、やって見せてください。」と言われ、動画を撮られた。
言われるがままにやった。
その後も散々だった。
「あなた本当に冷たいですね。他の先生方は愛情もって指導してくださってるのに。」
「他の保護者もみんな言ってますよ、あなたのこと。」
「うちの子に授業録らせましょうか?」
結局、1時間半程度、私に言いたいだけ言って、その会話も全て録音されていた。
その後はひたすら娘の自慢話をしていた。
私は、人格否定も含めた罵詈雑言を浴びたのが、ただショックだった。
( 私何か悪いことしたのかな… )
何をどうすればよかったのか、今でもわからないけど、その時はひたすら責任を感じて、苦しかった。辞めさせようとしてる?と思った。
保護者が帰った後、緊張が解けて、泣いた。
「話してる時に泣くかと思った〜」って笑われた。
「もうちょっとあそこはこう言えば良かったね」
「みんな通る道だからね〜私も昔水かけられたことあるよ〜」
こっちにとっては笑い事じゃない
なんでそれが当たり前になってんだ。教師に人権は無いのか?
誰にも守ってもらえないのか。ひたすら言われっぱなしで、勝手に撮られたりして、どうして心を擦り減らさないといけないのか。
新人だって舐めんな。って思う
教員免許とって、実習をして、試験に受かったからなったのに、確かに教員のなり手が少なくなっているのは事実かもしれないけど、なにも頑張らずに先生になったわけじゃない。
文句言うなら、指導方法のどこが悪いのか、細かく指摘してくれないとわからない。
私が何を間違えたのか、教えてくれないとわからない。
その保護者のクラスの、別の保護者からもたくさん文句を言われた。
「一年目とか関係ないですからね」
「美術の実技が出来ない子のフォローをもっとしてもらわないと。」
「テストでこれだけとっても成績がこれって、テストの意味あります?」
もうパンクしそうだった
保護者との話には、先輩上司は誰も同席してくれなくなって、自分1人では対応しきれなかった。もう何を言っても言い返されるから、最終的に黙り込んじゃった。
授業を見てもない人に、結果だけで全てを判断されて、言いたい放題言われるのが、悔しかった。
私がもっと背が高くて、いかつい見た目だったら、男だったら、文句言われずに済んだのかな。
そして、保護者との件があってから、だんだんとストレスが表に出始めた。